明治18年に製作された賽銭箱が傷んでしまったので新規に製作したいとご注文頂きました。毘沙門天さんの社に設置されるのですが、直射日光や風雨にさらされる厳しい条件を考えると材はやはりケヤキとなります。古い賽銭箱は正面も側面も上が大きく下方が小さい四方転びになっていて、これまで見た事も無いユニークな形状です。これと同じ形の物をとご注文頂き「ウ?ン…」。過去に四方転びを「送りアリ組」で組んだ事は無かったのですが、丈夫さを追求するとやはり「送りアリ組」以外は考えられません。まず仕口のサンプルを作り製作可能を確認した後に本番の送りアリを加工しました。四方転びですから組立も前板と側板を4枚同時に少しずつ入れ込んでいきます。一か所だけ組んで「次は...」とはいかないのです。仮組立後の分解も4か所を同時に少しづつずらしながら抜いていきます。賽銭の受板も長方形ではなく台形でケンドン式でしか嵌らず、久し振りに頭をひねった作業の連続でした。「奉納」の彫刻文字も消える事無く、これから100年以上もず?と端正な姿で毘沙門天さんの社で鎮座し続ける事を確信しています。
制作事例
Works